なぜ大学院で研究しようと思ったか
私は、過去に生保系のシンクタンクに出向していたことがあり、より専門性を高めようと以前から修士課程進学に関心がありました。そうした中で、保険の資本規制の検討が国際的に進められていることから、このような規制が保険会社に与える影響を分析しようという思いが強くなり、大学院でこの分野の研究をしようと思いました。
大学院の候補として専門性を深掘りできる社会人向けの国立の大学院を考えていましたが、本学が金融分野の研究が盛んであることが自分の専門性向上につながるので非常に魅力に感じました。
どのような研究テーマで研究をしたか
保険会社の国際的な資本規制に関して、現在、保険監督当局の国際機関であるIAIS(保険監督者国際機構)では、銀行のバーゼル規制の保険版であるICS(保険の資本基準)の開発に向けた検討が進められています。このような規制が導入されると保険会社の経営行動にどのような影響があるかを分析することを研究テーマとして取り上げました。具体的には、規制対象に該当する各保険会社は、日本での導入に備えて諸対応を進めていると考えられ、こうした行動を確認するために、保険会社の決算データを用いて費用関数を推定し、実証分析を行い、経費面における規制の影響を明らかにしようと考えました。
どのように研究が進んだか
将来的に博士後期課程への進学を目指していたので、1年目に論文を執筆するスケジュール感で実証分析を進めました。そのため授業科目の単位取得は2年計画で進めていきました。具体的には、授業科目は、1年次において1週間あたり極力2科目程度に絞って、残りを自分の実証分析を行う時間に充てるようにしました。
自身の研究については1年次の6月頃に一旦の実証分析ができたので7月に主指導の長田先生が主催されている埼玉大学金融研究会で分析結果の概要を報告し、その際に、諸先生方や本学の先輩方から多くの有益なコメントを頂戴することができました。これら頂戴したコメントを踏まえて修正を行い、9月に再度、埼玉大学金融研究会で報告いたしました。この際に頂戴したコメントを踏まえて論文の形に仕上げて、主指導の長田先生の薦めで12月に著名な学会の学会誌に投稿しました。この学会誌には最終的に掲載に至りませんでしたが、査読者からは論文の分析内容に好意的なコメントもあったことから自信が深まりました。その後、この論文を経済科学論究に投稿し、掲載していただけることになりました。そして、この論文を基礎として修士論文を書き上げました。なお、この修士論文については、本学の優秀論文賞をいただくことができました。
実際にどうやって仕事と両立したか
私は、保険会社で、資本規制や国際会計基準等の調査分析に携わっている関係から、研究分野と仕事との親和性はありました。しかしながら、授業の準備や課題は時間がかかるため、休日に集中的に対応しました。そのため授業科目を1週間で極力2科目程度に絞って、自分の研究を行う時間に充てるよう時間配分に注意しながら取り組みました。
1年次は、新型コロナウイルス感染症の拡大から授業はオンライン授業となり、仕事も在宅勤務が可能であったので、通勤時間分を授業の準備や自身の研究に充てつつ、仕事との両立を図りました。
研究をしてみて、どのようなことが得られたか
本学で金融分野の研究をして得られたこととして、まず挙げられるのは、埼玉大学金融研究会を通じた人的つながりです。この研究会では、金融分野を研究されている先生方や本学OBの方々が参加されておられるので、幅広い知見に基づいて、様々な視点から助言を頂くことができ、多くのヒントが得られ大きな収穫があります。修士論文が優秀論文を受賞できたのも、長田先生をはじめ、この研究会参加者の皆さまの助言のおかげと考えています。この研究会における人的つながりは、自分にとっては将来にわたって大きな財産になると考えています。
研究をして得られたこととして次に挙げられるのは、著名な学会の学会誌に初めて投稿した経験です。最終的にはこの学会誌には掲載されませんでしたが、今後に向けて良い経験になったと思います。