修了生の声

忙しい社会人のために平日夜間・土曜日に通える経済経営系大学院

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博士後期課程修了生(2021年度)
高山 和夫

「未来とは、今の自分自身による結果次第」  

なぜ大学院で研究しようと思ったか

40才を過ぎたときに業務で国際会議に出席したのですが、自分の語学力不足のみならず実務に関する専門性の無さに愕然とした覚えがあります。その後他省庁に出向し、一連の公的統計改革に携わることで、自分自身の担当業務に関する知見の無さを痛感し、改めて勉強しなおそうと決意しました。日々働きながら研究するということで、上司(当時)に相談したところ、前の上司が本学で学位を取得されたことを教えて下さり、自分でも調べてみました。その上で、平日夜間と土曜に都内のキャンパスに通えるという現実性、自分自身の実務経験を基に研究したいテーマを学べるという専門性、の観点から本学を選び受験しました。

どのような研究テーマで研究をしたか

私は、GDPに代表される国民経済計算(SNA)の推計実務家として、SNA推計方法の基である産業連関表の作成方法が大きく転換する歴史的ターニングポイントであることから、わが国における産業連関表から供給・使用表への移行理由について歴史的考察を行いました。

どのように研究が進んだか

私は、インテンシブ・プログラム(博士後期課程への進学を目指す社会人のためのリサーチワークにウェイトを置いたプログラム)で入学をしましたので、MC二年間+DC一年間の、計三年間で学位取得を目指しました。

MC1年

最初は手探り状態で、前期は主指導教員の授業を受けることで基本的な考え方を学ぶ一方、興味を持った授業を受けながら、研究テーマに関する文献を収集し、まずは理論面の理解を深めるよう心がけました。後期に「経済学史特論」を受講したのですが、先生とのマンツーマンでしたので、毎回レジュメを用意・発表するということで準備も大変でしたが、大いに学ぶことが出来ました。この頃から、研究テーマを理論やモデル分析ではなく、歴史研究として論文にまとめたいという考えを持つようになり文献収集を進めていたところ、良い文献を発見することが出来、大まかな研究に関するストーリーや章立てをイメージし始めました。

MC2年

5月に中間報告会があり、これまで学んだことを発表したのですが、先生方からの研究計画に対する根本的なコメントに答えられず、改めて自分の研究計画や内容を考え直す機会になりました。先生からは夏までに「経済科学論究」投稿論文を執筆するように指導があり、それに向けた関連資料の収集と精読に努めました。その頃からコロナ禍が蔓延して文献を収集するのに苦労しましたが、オンラインによる国立国会図書館の遠隔複写、Google scholar、等を活用しました。また収集した膨大な資料や文献は、市販の文献管理ソフトを使うことで効率的な文献管理を進めることが出来、大変便利でした。歴史研究は必要とする文献を探し求めることが不可欠ですが、サルベージ方式で収集と精読を重ねることで、少しずつ必要とする文献に対する目が養われていきました。秋に「経済科学論究」への投稿と査読審査を経て、投稿がアクセプトされたときは嬉しかったです。この投稿論文をベースに、修士論文の提出に向けて考察を重ね、MC2年1月に修士論文を提出しましたが、その裏でDC進学に向けた研究計画書の作成も進めました。

DC1年

前期は5月に中間報告会があり、博士論文のアウトラインを説明したのですが、研究テーマ設定を絞り込むことができず、先生方から厳しいコメントを頂きました。この頃は特に、学術論文に対する作法に慣れず苦労したので、論文執筆の参考書を読み進めました。10月に博士論文の初稿提出、関連学会での発表、4人目の先生も交えた合同検討会が予定されていたため、その夏は博士論文の執筆と研究に明け暮れました。合同検討会では、先生方から初稿に対する大変厳しいコメントを多数頂き、大幅な書き直しを行いました。年末は業務も多忙を極め、一方で博士論文の書き直しを進める必要もあり、正直提出を諦めかけたのですが、先生とのZoomでの打ち合わせにおいて論文の方向性に関するアドバイスを頂きまして、何とか年明けに提出することが出来ました。

実際にどうやって仕事と両立したか

私の場合は「仕事と家庭との両立」という点では、複数年にわたっての研究生活であるため「持続性」をキーワードに、(1)家族や職場など周囲の理解とサポート、(2)計画的に進める意識、(3)研究をすることの優先度、(4)予算面、を重視しました。

第一に、平日夜間・土曜に講義を受けることから、授業がある曜日は定時で帰るといったことが必要であり、家族サービスも限定的になることから、社会人大学院生としては重要な要素だと思います。研究生活を継続するということは、最終的には自分一人で黙々と論文を執筆し研究成果を出す必要があり、想像以上に孤独ですから、周囲の人の理解・サポートは大切だと思います。偶然にも同じ職場に埼玉大学大学院の先輩がおられたので、適宜アドバイス等を頂き、大変助かりました。

第二に、一度研究をするという気持ちが途切れてしまうと再開することが難しくなるため、いつまでに何をすべきかを計画して、平日夜間や週末を利用して研究を続けました。また、大学院での授業における発表の機会を意識的に設定し、先生や同じ研究室の仲間との議論をすることで、独りよがりな研究になることを避けるようにしました。

第三に、この三年間は学術論文を執筆し成果を上げることを最優先に考えました。全く想定外でしたが、コロナ禍が蔓延して夜の会合や週末に外出する機会もほとんどなかったので、結果的に集中して研究を継続することが出来ました。

第四に、研究を継続するには、文献・資料収集や学費などそれなりに金銭的負担があるという現実です。複数年に及ぶ研究生活を続けるためにも、重要な観点だと思います。

この他、大学院の事務職員の方々にも、提出書類の書き方など不明な点は遠慮せずにメールで確認するなどして、細かな面でサポートいただきました。どうも有り難うございました。

  1. 研究をしてみて、どのようなことが得られたか

専門的知見を得たこともありますが、講義や研究会内でのプレゼン、学会での発表、学術論文の執筆の作法、同じ分野での研究者同士の交流など、本当に多くのことを経験し学びました。そういう意味で、この三年間は凝縮された密度の濃い年月でした。

「未来とは、今の自分自身による積み重ねの結果である」という格言のとおり、今この瞬間を日々大切にしていくことで、未来が切り開かれるように思います。皆さんも、ぜひ埼玉大学大学院の門をたたいてみてください。切り開いてみると、そこにはまた新たな世界が広がっていますよ。

博士前期課程修了生
年度 指名
2023 Batjin Natsagdorj
2023 Xiao Yao
2022 匿名(Anonymous)
2022 Ma Minghui
2022 増井 正幸
2021 修了生(匿名希望)
2020 角三 美穂
2019 修了生(匿名希望)
2018 橋本 武敏
2018 椙江 亮介
2015 平岡 憲道
2015 八藤後 聡
2014 市川 千尋
2007 小南 和雄
博士後期課程修了生
年度 指名
2022 朴 峻喜
2021 高山 和夫
2020 天達 泰章
2019 杉山 敏啓
2019 須内 康史
2018 神尾 真次
2018 宮本 弘之
2015 深谷 正廣
2015 田中 恒行
2014 蔡 玉成(さい ぎょくせい)
2012 孔 繁智
2012 酒巻 雅純
2012 目 篤
2012 鈴木 芳治
2011 植林 茂
2010 劉 博
2007 大江 清一
2006 神津 多可思