2008(平成20)年3月 埼玉大学経済科学研究科博士課程後期修了
私が夜間に開講された本学の経済科学研究科博士課程前期に入学したのは2003年4月、定年までわずか5年余りを残す50歳を越えた時のことでした。さらにその後、博士課程後期に進学し、学位を取得したのは金融機関を定年退職するわずか1か月前のことでした。
第二の職業人生を大学教員として研究と教育に従事したいと考えていた私にとって、定年までに残された5年間で、大学教員になるための必要条件である博士号を取得するには、博士課程前期への入学はまさにギリギリのタイミングであったわけです。本学では計画通り学位を取得することはできましたが、すぐに大学教員となることなく、しばらくはメーカーに籍を置きながら、他大学で非常勤講師を5年間務めました。
第二の職業人生に対する希望を抱きながら、重責を担う立場にあるために、具体的な行動に踏み切れないで悩んでおられる方は多くいらっしゃると思います。
その場合は、可能な限りたくさんの時間をかけて、自分の将来に対する希望がどの程度真剣なものであるかを振り返ることをお勧めします。特に第二の職業人生に対する自身の希望が何歳の時に芽生えたのか、そして、5年の間、博士号取得に向けて時間をかけることにより失うものがあるとすれば、学位取得によって得るものがその喪失を埋めて余りあるのか否かを冷徹に見つめるべきであると思います。
何歳の時に希望が芽生えたのかを重視するのは、それによって現在所属する組織での活動にかける意欲の強弱が明らかになるからです。また、得失を冷徹に判断することは、将来選択するキャリアパスに対して決して後悔することがないようにするためです。つまり、冷徹な計算に裏づけられた確固たる信念があって、はじめて具体的な行動がその実を結ぶのではないかと思います。
私は遅まきながら積年の希望がかない、現在は、埼玉県内の私立大学で特任講師として経営学を教えています。
大変なロートルではありますが、大学教員という激務に耐えられるのも、自分が本当にやりたかったことができているという実感と、日々の充実感があるからだと思います。50歳を越えたあの日、本学への入学を決断して本当によかったと感謝しています。
※修了生の所属先は、原稿作成時のものです