修了生の声

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博士後期課程修了生(2015年度)
深谷 正廣

  • 1970年 熊本大学工学部を卒業後、エレクトロニクスメーカーに勤務
  • 2012年4月 役員退任後、埼玉大学大学院経済科学研究科博士前期課程入学
  • 2014年4月 同研究科博士後期課程に入学
  • 2016年3月 修了

私は、企業実務で培ったことを整理したいと思い、甘い自分を律する為に、大学院の博士課程という箍をはめて取り組みました。そして、研究テーマを深める中で、近年の日本エレクトロニクス産業の凋落と、ものづくりの軽視の論調に、自分なりの問題意識が高まりました。 以下、少しハウツウ気味に自分の経験をお伝えします。

1. 博士課程修了の枠組み

埼玉大学経済学部の博士課程は、大きく3つの枠組みがあります。

  1. 論文作成
  2. 必須講義
  3. 査読論文

です。

この3つの枠組みを修了しなければなりません。

まず論文作成ですが、埼玉大学の場合は、論文のレベルと完成度を重視しています。必須講義は、博士課程修了の為の必須条件ですから、論文作成に入る前に終了することを勧めます。査読論文も、同じく博士課程修了の必須条件となっています。しかるべき学会の査読付き論文の掲載実績のある方は問題ありませんが、実績のない私は、埼玉大学経済学会の経済論究に掲載してもらいました。

査読論文作成には、字数の制限と論文作成の作法をマスターする必要があります。これに私の場合は、半年ほどかかりました。これは年に一度ですから、計画的な投稿が必要となります。先行研究についての調査や研究テーマの問題意識を整理したものを取り上げられる方もありました。

2. 論文作成のゲート

埼玉大学経済学部では、博士課程の論文審査のゲートを5つ設けてあります。

  1. プロジェクト研究会(10 月)――公開
  2. 中間報告会(5月)――公開
  3. 学位論文提出と合同検討会(10月)――公開
  4. 学位論文報告会(12月)――公開
  5. 最終試験(2月)――非公開

プロジェクト研究は全体の構成と問題意識を提示します。中間報告会は、論文の主要部分について提示します。

10月の学位論文提出と合同検討会では、主・副の指導教官からの鋭い指摘があります。

この指摘と訂正については、12月の学位論文報告会までに訂正が求められます。最終提出した論文についての非公開の最終試験が2月にあります、この試験は、主・副以外の先生も加わっての審査となります。以上のように上記のゲート(節目)で論文が鍛えられていきます。

3. 論文作成のプロセスの中で

私の場合は、長年勤務した企業の役員を退任した後でしたから、現役バリバリの社会人の方より、時間の余裕はあったと思いますが、順調に進んだわけではありません。エピソードをいくつか挙げてみます。

(1)病気での空白期間

5月、中間報告をした後、病気になり、1か月ほど入院しました。論文作成の遅れもありますが病気による気力の衰えからの回復は一苦労でした。

(2)各ゲートでのゼミ仲間の批評

各ゲートに先立って、ゼミで仲間から、手厳しい指摘を受けます。これをありがたく拝聴して、節目の報告会の前に、論文の修正に反映させました。

(3)担当教官の指導

指導の先生からは、論文作成の基本作法から指導を頂きました。「教授」でさえ、自分の論文作成に 10 回見直すのに、あなたは、倍以上の見直しが必要とのご指導をいただいたりしました。

(4)勤務企業との論文内容調整

論文の事例内容が、勤務していた企業だったので、企業ビジネスの不都合にならないようにしなければならない。その為、企業の了解を慎重に取りつつ進めました。

(5)自分で論文作成

長年、企業で管理者、経営者を務めていると、口頭指示、箇条書き表現、人任せなどに慣れてしまっています。パワーポイント的箇条書きストーリーと部下や周りの関係者に依存する会社人間体質からの脱却が必要でした。―――文章、それも、主張したいことを相手にわかるように表現することは大変難しく、論文提出後の今でも、出来るようになったとは言えません。

(6)埼玉大学論文作成の作法

論文作成には作法があり、修士の時に、テキストの配布や、講義での指導もありました。学校や学会により、作法の違いがあるようです。早い時期に慣れて、論文の内容の検討にまい進出来ることが望ましく、論文の本旨に関係ないケアレスミスを未然に防ぎたいものです。私は読み返す度に作法の誤りを見つけていました。

4. 時間配分

(1) 修士期間は、講義の単位は、土曜の講義を多く取得し、経済学の幅広い基礎知識の取得に努めました。これは、博士論文の内容の深み形成に有効でした。また、客員教授との知己を得ての情報交換は、現在でも貴重な財産となっています。

(2) 博士課程必須の特論講座は、私の論文テーマの「ものづくり」関連である「中小企業・企業戦略」を、他のゼミ仲間ともども受講。それ以外に、「グローバル企業、日本経営史」の特論を加えて受講し、テーマ研究を幅広い視点から見ることに役立てることが出来ました。但し、特論講義は少人数の生徒となり、論読宿題は、50~100 頁/週となり、この間は、社会人として、時間的に他のことが手につかないことになります。

(3) 論文作成のピークは、私の場合は、8月の夏休みでした。家族を田舎に帰省させて、1か月、自宅で籠って、詰めました。7 月の途中での進行具合がまずくて、指導先生から、ダメ押しされ、危機感を持って取り組みました。正直、論文完成を断念しようかと、心が折れそうでした。

埼玉大学大学院に博士号取得を目指し、足掛け4年、幾つもの障害がありましたが、今年、何とか博士号を取得することが出来ました。振り返って、家族の理解と応援、先生方の叱咤激励、ゼミ仲間との切磋琢磨、勤務先会社の理解など、みなさんの応援の御蔭と感謝しています。

※修了生の所属先は、原稿作成時のものです

博士前期課程修了生
年度 指名
2023 Batjin Natsagdorj
2023 Xiao Yao
2022 匿名(Anonymous)
2022 Ma Minghui
2022 増井 正幸
2021 修了生(匿名希望)
2020 角三 美穂
2019 修了生(匿名希望)
2018 橋本 武敏
2018 椙江 亮介
2015 平岡 憲道
2015 八藤後 聡
2014 市川 千尋
2007 小南 和雄
博士後期課程修了生
年度 指名
2022 朴 峻喜
2021 高山 和夫
2020 天達 泰章
2019 杉山 敏啓
2019 須内 康史
2018 神尾 真次
2018 宮本 弘之
2015 深谷 正廣
2015 田中 恒行
2014 蔡 玉成(さい ぎょくせい)
2012 孔 繁智
2012 酒巻 雅純
2012 目 篤
2012 鈴木 芳治
2011 植林 茂
2010 劉 博
2007 大江 清一
2006 神津 多可思