修了生の声

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博士後期課程修了生(2018年度)
宮本 弘之

なぜ大学院で研究しようと思ったか

○きっかけは同僚からの紹介

私が埼玉大学大学院の博士後期課程について初めて知ったのは、会社の同僚から「埼玉大学で博士号を取得した」という話を聞いた時です。その時は、「働きながら博士号をとる道もあるんだ」、「埼玉まで通うのは大変だったんだろうな」と思ったのですが、良く調べてみるとサテライトキャンパスは、JR東京駅のすぐそば、私の勤める会社のオフィスからも歩いて5分程のところにありました(注:その後、サテライトキャンパスはJR神田駅とJR秋葉原駅の間に移転)。

シンクタンクに勤めている私は、「アカデミックなアプローチが自分の会社での研究や仕事に新たな視点を与えてくれるのではないか」と思い、埼玉大学大学院の門をたたいてみようと思ったわけです。

どのようなテーマで研究をしたか

○トップジャーナルを読んで研究テーマを設定

四半世紀前に理工学系の博士前期課程(修士)を修了していた私にとって、アカデミックな世界には長いブランクがあり、当初、研究テーマや研究計画の策定に苦労しました。具体的な研究テーマを明確に設定できなかったため、金融機関のリテールビジネスに関する業務経験が長いことを踏まえ、金融論・経済学が専門の長田先生(主指導)、伊藤先生(副指導)とマーケティングが専門の薄井先生(副指導)に指導をお願いしました。自分の業務からの問題意識を明らかにするだけでなく、その問題意識がどのようなアカデミックな研究領域につながるかという点を、入学前にもう少し明確にしておくべきだったというのが、今振り返っての反省点です。

入学当初の漠然とした研究テーマの設定から一歩進んだのが、1年目前期の金融論特論(主指導の長田先生が担当)の授業でした。その授業の中で、英文のトップジャーナルから3本の論文を読んで発表する課題があり、この課題に取り組む過程で「家計金融(Household Finance)」という分野の研究が2000年代以降に活発になっていること、そして自分の関心や問題意識とぴったり合っていることを知りました。入学してから早い時期に研究領域の的を絞れたことは大変幸運だったと思います。

どのように研究が進んだか

○トップジャーナル、ゼミ、体系的に書かれた書籍が推進力になった

3年間の研究プロセスの概略は次の通りです。1年目は指導教員から指定されたトップジャーナルの中から興味のある論文をいくつか読み、それを踏まえて研究テーマを設定し、学会発表の準備をしました。2年目は、2回の学会発表とそれに基づく学会誌への投稿、及び、経済科学論究への投稿を行いました。3年目は、学位論文の構成を練り、改めて先行研究を整理し、前年に投稿した論文の修正と再投稿を行いました。そして、中間報告や合同検討会での指導教員からのアドバイスを踏まえて学位論文を完成させました。

試行錯誤しながら進めてきたため、何が正しいのかはわかりませんが、私なりに重要だと思ったポイントが3つあります。第一に、「トップジャーナルの論文を読みなさい」という長田先生の指導です。社会人学生としては、日本語の論文を読む方が時間効率が良いと考えるかもしれませんが、「質の高い研究をするためには、(英文の)トップジャーナルで議論されている問題意識を正しく踏まえるべき」ということを入学間もない時期に教えていただいたことは、学位論文を書くというゴールに対し早道になったと思います。

第二に、伊藤先生や薄井先生が開催するゼミ(研究会)に参加したことです。ゼミの場で、他の社会人学生の研究プロセスを知ることができ、また、多くのネットワークができました。研究分野は異なれども、論文の書き方や学位論文の仕上げ方について、等身大の理解が進みました。例えば、「3つの独立した論文を書いて、それを学位論文の中核の3つの章にする」という方針は、両先生のゼミを通じて先輩の学生の取り組みから学んだことです。

第三に、論文だけでなく家計金融(Household Finance)に関する書籍を読んだことです。2年目の夏に、Household Financeを取り上げた英文の書籍があることを知り、時間をかけて読破しました。論文を読んで断片的に入ってきた情報が、書籍を通じて体系的に整理され、この分野の研究を進めていくことに自分なりの自信を持てるようになりました。

実際にどうやって仕事と両立したか

○自分に合った研究スタイルを見つける

社会人学生にとって仕事との両立が研究を進めるための最大の障壁であることは、入学前から想像していました。実際に入学してみると、置かれた状況は人によって千差万別であることがわかりました。研究に多くの時間を当てることができる人もいれば、仕事や家庭の事情で学業を断念せざるをえない人もいました。私はその中間だったと思いますが、研究に必要な時間を確保できず精神的に焦りを感じることが何度もありました。特に、投稿論文の締切と学内での報告の時期が重なった時などは、大変な負荷がかかりました。

入学当初は、1日に1時間でも2時間でもコツコツと研究しようと考えました。実際にそれを実践している人もいましたが、1年目の半ば位に、そのやり方は自分には合わないと感じるようになりました。その後は、仕事に集中する時期と研究に多くの時間を割く時期を、1~2週間の単位で濃淡を付けるようにしました。このことから、仕事と両立しやすい自分の研究スタイルを見つけることが大事であることを実感しました。

研究をしてみて、どのようなことが得られたか

○新しい世界

研究から得たことを簡潔に述べるのは難しいのですが、一言でいえば「新しい世界」だと思います。つまり、仕事を通じて得た思考回路、行動様式、人脈などとはまったく別のアカデミックな思考回路、行動様式、人脈が形成されたと思います。この二つの世界は、交わらないものではないと思いますが、自分の中に独立に存在していることに意味があるのではないかと思っています。仕事をする上でも、アカデミックな研究をする上でも、もう一つ別の世界を持つことがどこかで重要な意味を持つことがあるでしょう。具体的な例を挙げれば、在学中に家計金融(Household Finance)の研究者のカンファレンスに参加する機会がありました。ここで得た「新しい世界」を今後も大事にしていきたいと思っています。

埼玉大学大学院で得た「新しい世界」をどのように生かしていけるか、そしてその世界を広くしていけるかは、すべて修了後の自分にかかっていると思います。その扉を開いていただいた埼玉大学及び指導教員の先生方に深く感謝いたします。

博士前期課程修了生
年度 指名
2023 Batjin Natsagdorj
2023 Xiao Yao
2022 匿名(Anonymous)
2022 Ma Minghui
2022 増井 正幸
2021 修了生(匿名希望)
2020 角三 美穂
2019 修了生(匿名希望)
2018 橋本 武敏
2018 椙江 亮介
2015 平岡 憲道
2015 八藤後 聡
2014 市川 千尋
2007 小南 和雄
博士後期課程修了生
年度 指名
2022 朴 峻喜
2021 高山 和夫
2020 天達 泰章
2019 杉山 敏啓
2019 須内 康史
2018 神尾 真次
2018 宮本 弘之
2015 深谷 正廣
2015 田中 恒行
2014 蔡 玉成(さい ぎょくせい)
2012 孔 繁智
2012 酒巻 雅純
2012 目 篤
2012 鈴木 芳治
2011 植林 茂
2010 劉 博
2007 大江 清一
2006 神津 多可思