大学院進学の動機
日頃から関心のあった会計学の分野で社会人として経験した実務(排出量取引)に関する学術論文を作成したいと思い大学院進学を志望しました。埼玉大学大学院ならしっかりとした論文指導をしていただけると考え、また自身のレベルアップにもつながると考えたのが進学の動機です。
仕事と大学院の両立について(経験談等)
社会人は仕事が生活の中心なので当然仕事をおろそかにはできません。私の場合は入学直前に兄が病気で入院、ほどなくして母までも病気で入院したことで、その後、仕事をしながら母と兄を介護するという緊急事態となりました。
介護は初めての経験で、この青天の霹靂にしばらくは心身ともに疲労困憊。また当時は川越市内勤務の遠距離通勤で時間的余裕もなく、「仕事と介護でもう精いっぱい。大学院で学ぶことは無理ではないか。」と自問しました。しかし、「大学院の勉強は自分ができる範囲のことをやろう。もしそれが無理なら諦めよう。」と開き直ることにより少しずつ生活のペースも軌道に乗り始め、平日の夜と休日になんとか勉強時間を確保できるようになりました。このように私でも両立できたので、仕事と大学院の両立は、工夫とやる気次第で十分可能だと思います。
研究テーマについて
『排出量取引にかかる会計基準の考察』が私の修士論文の研究テーマです。現在、世界各国で実施されている排出量取引ですが、国際的に合意された統一的な会計基準は未だ存在しません。そこで国際財務報告解釈指針委員会が公表し、後に撤回された、排出量取引にかかる解釈指針について考察することにより、将来の国際的な会計基準導入に向けた手がかりを得ることを意図して論文を作成しました。
会計学の近田典行教授を主指導に仰ぎ、親身にご指導いただきました。作成過程でとかく総花的となりがちな私の論文でしたが、筋の通った、的を絞った内容へと導いていただきました。ほんとうに近田先生にはお世話になりました。心から感謝申し上げます。
大学院での研究活動の意義
博士前期課程は修士論文の作成が研究の大きな柱となります。自分の思い定めた研究テーマを深く掘り下げるため必要な文献をできる限り集め、じっくりと読み込んで、論理展開の明確な論文に仕上げていくことは研究の醍醐味です。とりわけ社会人は実務経験のバックボーンがありますのでこれを有効に使わない手はありません。社会人の貴重な経験を論文作成に十分活かしていただきたいと思います。
大学院での学びと将来展望(仕事ほか)
埼玉大学大学院にはさまざまな科目が用意されています。自分の論文の研究テーマのほか、他分野の興味ある科目も学ぶことにより研究に広がりを持たせることができます。また学びの仲間との交流もあります。私は異業種や留学生の方々との議論や交流を通して大いに刺激を受けることができました。将来は大学院で学んだことを礎に、実務の世界でよりいっそう貢献できるよう研鑽を積んでいきたいと思います。
これから志願者に伝えたいメッセージ
修士論文の作成を義務づけない大学院もありますが、埼玉大学大学院はしっかりとした修士論文の作成を求めます。これは大変なことですが、苦労して論文を書き上げた後の充実感、達成感は何ものにも代えがたいものがあります。皆さんにもぜひ論文作成の醍醐味を実感していただきたいと思います。
埼玉大学大学院経済経営専攻を選んだ理由
一言でいえば、充実した教授陣、多彩な履修科目、学びやすい環境でしょうか。私にはどれも魅力的に映りました。埼玉大学大学院は実務に直結した履修内容を用意しているので社会人の学びの場としては最適だと思います
授業や論文制作過程における経験談など
授業は漫然と講義を聴くのでなく積極的に議論することを心がけました。先生方も院生に対して積極的な発言、授業への貢献を期待しています。また私は一年次のゼミから近田先生のご指導を得て、論文の論点抽出と絞り込みを図ることができました。
なお論文作成に必要な文献は一年次からできるだけ早く集めておくことをお勧めします。二年次になり執筆が楽になってきます。私は仕事と介護で精いっぱいの毎日だったのですが、普段からこつこつと論文に必要な文献収集に心がけました。
その他
波乱万丈、紆余曲折ありながらの二年間でした。最後にこの紙面をお借りして、主指導の近田先生、副指導の吉田先生をはじめお世話になった諸先生方、経済学部学務の皆さま方に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
※修了生の所属先は、原稿作成時のものです