修了生の声

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博士後期課程修了生(2020年度)
天達 泰章 (内閣官房兼内閣府規制改革・行政改革担当大臣直轄チーム 参事官補佐)

なぜ大学院で研究しようと思ったか

「金融市場での実務経験を学会に還元する」

内閣府、総務省、日銀、三菱UFJ銀行で、エコノミストや為替アナリスト等として調査実務に従事してきただけでなく、債券運用や為替介入など金融市場実務にも従事してきた。金融市場実務はプロの世界であり、学術研究者や記者を含めた一般の方々には馴染が薄く、金融市場実務を理解するハードルは高いと考える。そのため、私は、金融市場参加者、学術研究者、一般の方々の三者の橋渡しとなるようなレポートの執筆に一貫して努めている。

例えば、「為替スワップと通貨スワップの裁定関係と価格発見力」(日本銀行ワーキング・ペーパー)は、為替スワップと通貨スワップ(べーシス・スワップ)の取引の仕組みを紹介した上で、両者の裁定関係を金融市場実務の面から分かり易く示し、更に、学術的にも示したものである。また、『日本財政が破綻するとき』(日本経済新聞出版社)は、金融市場実務の最先端(当時)であるドル建て日本国債利回りの考え方を用いて、外国投資家からみた我が国国債の信用リスク(財政破綻リスク)を示したものである。

こうしたスタンス、取り組みの中で、埼玉大学大学院で博士(経済学)を取得された水野和夫法政大学教授からご紹介頂き、金融市場での実務経験を学会に還元することを課題に博士課程での研究に取り組んだ。

どのようなテーマで研究をしたか

「国債イールドカーブと金融政策反応関数」

金融政策は景気物価動向によって主に決定されること(金融政策反応関数と称する)から、債券市場を中心に金融市場実務では、日々発表される経済指標を分析し、中央銀行の金融政策反応関数を予測しながら、投資・運用されている。しかし、国債イールドカーブ(金利の期間構造)の決定要因に関する実証研究は、金融工学や数理ファイナンス等からのアプローチで複雑化しているが、伝統的な金融経済理論(マクロ経済理論、テイラールールなど)に基づいたアプローチはほとんど研究がなされていない。

経済指標が金融政策を決定し、金融市場を動かすことを、そのために、金融市場参加者が日々、経済指標をウォッチし、金融政策の先行きを日々予測して売買している実態を学術研究に取り入れ、学会に示すことが私の貢献であると考え、「国債イールドカーブと金融政策反応関数」(博士論文)の関係を分析した。国債イールドカーブのフェアバリューを金融経済理論に基づいて分かり易く説明することができたと考える。

どのように研究が進んだか

「学術研究における議論(壁打ち)」

これまでの実務経験から、先行研究の理解やデータ収集、計量ソフトを使った分析はレポートレベルの作成では問題がなかったが、学術レベルの議論(壁打ち)は債券運用の現場では出来なかった。そのため、長田先生等に頻繁にご指導頂き、学術研究における議論(壁打ち)を中心に論文を作成・洗練させていった。

特に、論文の査読において、査読者とのやり取りを何回も行ったことは、査読者への対応方法を学ぶ上で良い経験であった。また、長田先生の金融特論と埼玉大学金融研究会は、様々な分野の学術研究を議論し、知見を広げる上で貴重な時間であった。ご指導に深く感謝申し上げます。

実際にどうやって仕事と両立したか

「休日の貴重な時間を研究に割くことに快く協力してくれた家族に心からありがとうと言いたい」

平日は、外債運用の最前線にいたことから、朝早くから夜遅くまで金融市場をウォッチする必要が有り、学術研究にほとんど時間を割くことはできなかった。長田先生による論文指導も平日の遅い時間や週末にお時間を頂くことが多かった。

また、土日は子供と一緒に図書館に行って、研究する日々であった。休日の貴重な時間を研究に割くことに快く協力してくれた家族に心からありがとうと言いたい。

研究をしてみて、どのようなことが得られたか

これまで金融経済について分析し、レポートの執筆に取り組んで来たが、学術論文の書き方などを学ぶことが出来たことは大きな収穫である。

その成果は、内閣官房兼内閣府規制改革・行政改革担当大臣直轄チーム分析レポートNo.1「政府による社会給付に関わる所得制限の横断的整理と課題」の執筆に生かされている。社会給付における所得制限を網羅的かつ横断的に整理、分析し、課題を示した先行研究はほとんどない。学会だけでなく、行政や一般社会においても稀有であり、貴重な成果だと考える。御覧頂けると幸いです。

(規制改革・行政改革担当大臣直轄チーム取組一覧No.61「規制改革・行政改革担当大臣直轄チーム分析レポート『政府による社会給付に関わる所得制限の横断的整理と課題』の公表について」)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/direct/d_index.html

(「政府による社会給付に関わる所得制限の横断的整理と課題:子育て、教育、住宅、就労、生活保護、医療、介護、年金、母子家庭、障害者への給付」)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/direct/210730direct03.pdf

博士前期課程修了生
年度 指名
2023 Batjin Natsagdorj
2023 Xiao Yao
2022 匿名(Anonymous)
2022 Ma Minghui
2022 増井 正幸
2021 修了生(匿名希望)
2020 角三 美穂
2019 修了生(匿名希望)
2018 橋本 武敏
2018 椙江 亮介
2015 平岡 憲道
2015 八藤後 聡
2014 市川 千尋
2007 小南 和雄
博士後期課程修了生
年度 指名
2022 朴 峻喜
2021 高山 和夫
2020 天達 泰章
2019 杉山 敏啓
2019 須内 康史
2018 神尾 真次
2018 宮本 弘之
2015 深谷 正廣
2015 田中 恒行
2014 蔡 玉成(さい ぎょくせい)
2012 孔 繁智
2012 酒巻 雅純
2012 目 篤
2012 鈴木 芳治
2011 植林 茂
2010 劉 博
2007 大江 清一
2006 神津 多可思